「玲くん、玲くん、玲くん、

うあああああん!!!」


芹霞さんが泣きながら、玲様の身体に飛びついた。


「よかった、よかった!!!

玲くんが元気になった、

うああああん!!!」


玲様は…芹霞さんの背中に回そうとした手を少し震わせて、そしてきゅっと拳を作ると、芹霞さんの身体を押して離した。


「櫂の処に行こうか…」


芹霞さんの不満げな顔に気付いているのに、目覚めた玲様はやはり芹霞さんを拒まれて。


立ち上がった玲様の服から、ひらひらと何かが舞い落ちる。


それは1枚の紙切れ。


「符呪?」


玲様がそれを拾うと、ようやく動くことが出来たらしい皇城翠が、


「ああ、№5がお前の治療に力使い果たしたから、人型保てなくなったんだな。あっちの世界でまた力溜めて、復活してくるから大丈夫さ」


陰陽道や道教の世界はよく判らないけれど。


力がなくなれば、力ある世界に強制送還され、充電されれば戻されるなど…何とも都合のいい世界だ。


その中継をしている皇城翠が特殊なのだろうか。


「ええと…此処は何処なのかな?」


玲様は、芹霞さんではなく…由香ちゃんと私に聞いて。


芹霞さんは、悔しそうに唇を噛んで下を向いてしまって。


そこまで…芹霞さんを拒むのは何故?


そんな時だ。

突然皇城翠の服の一部が燃え出したのは。



「え? え?」


彼は慌てて上着を脱いで、床に叩き付けて火を消せど。


「やば」


彼はそう呟き、藍鉄色の瞳を私達に向けた。


「紫堂櫂につけた式神が…符呪に戻され更に燃やされ返された」


「どういうこと?」


玲様は、気怠そうな面持ちのまま、鳶色の瞳の光だけを鋭くした。


「式返し…が出来る術者が紫堂櫂の傍にいる。そしてそいつは俺達の侵入を判っていて、俺達を誘ってやがる」