「な、何だか…師匠が悩ましいというか…エロい…。苦しんで意識無くしてまでも、こんなに色気垂れ流すなんて、どれだけ色気有り余しているんだよ、全くもう…ああ、神崎!!! 鼻血、鼻血!!!」
私は、芹霞さんの鼻血の手当をしながら、玲様を盗み見る。
確かに――艶めいている。
次第に緩やかになりつつあるけれど、
切なげに喘ぐような吐息。
苦悶に歪む端麗な顔。
少しずつ紅潮していく白い頬。
そして仰け反るような姿勢のまま、玲様はゆっくりと…乱れきった上半身を起こした。
汗ばんだ鳶色の髪を掻き上げ、潤んだ鳶色の瞳を開いて私達に寄越し。
気怠げながらも、まるで挑発するように僅かに目を細めて、にっこりと微笑んだ。
「迷惑…かけてごめんね?」
何処から何処までの記憶があるのか判らないけれど。
今居る玲様は、完全なる正気で。
ああ、皇城翠の力に感謝せずにはいられない。
その皇城翠と言えば、どすんと尻餅をついて。
「どうしたんだい?」
遠坂由香の問いかけに、真っ赤な顔で答えた。
「キた。俺…腰にキた…。
し、紫堂玲…あいつ…本当に男かよ…」
玲様のフェロモンにやられて、腰砕けになってしまったらしい。
「れ゛い゛ぐん゛!!!」
芹霞さんが感激に泣き出して、濁点交じりに玲様の名前を呼べば、
「……ありがとう、僕を呼んでくれて…」
少し躊躇ったような間をあけて、はにかんだように微笑んだ。

