しかし玲様の反応はなく。
「嘘、やだ。ねえ玲くん、冗談やめて!!
お願いだから、目を開けて、玲くんッッ!」
控え目に、だけどしっかりと玲様の頬をぺちぺちと叩いた。
「あたしを置いていかないでよッッッ!!!
"お出かけ"も…まだ何もしてないじゃない!!」
芹霞さんが玲様を抱きしめた。
その光景に――
私は痛む胸を感じながら、唇を噛む。
私は…芹霞さんと誰かが抱き合う姿を見たくはないんだ。
例え…それが意識のない玲様であっても。
「ねえ、玲くんの心臓の動きが変なの。一定してないの。早かったり遅かったり」
「何だって!!?」
驚いた遠坂由香が、玲様の頚動脈を触った。
「かなり強い不整脈だ。このままでいけば…心筋梗塞起こすかも知れないぞ!!?」
「そんな…薬、ねえ薬は!!?」
強力なニトロを飲んでの結果。
もう薬に頼れない。
今の玲様の体力に、薬の重ね飲みはきつい。
結界…
私の結界で、玲様の心臓を治療できるのだろうか。
回復結界の専門(エキスパート)である、玲様を。
そんな時。
皇城翠の式神の1体が、がしゃがしゃとまずは玲様の枷をすべて外した後、玲様の首元から…制服の中に潜り込んだ。
膨れた制服の中で、もぞもぞと動いている。
そして何かの…力が膨れあがるのを感じて。
「――…は…ぁ……ン…」
玲様の…乱した呼吸を聞いた。

