緩急ついた玲様の錯乱は、玲様の命を削り取っていたように思う。
玲様が絶叫しながらびくびくと身体を震わす度、玲様の呼吸が乱れて弱くなる。
此処までもっていたのが奇跡的なくらい、玲様の錯乱は激しかった。
狂いと一言で片付けるには簡単すぎて。
玲様は全身全霊で、何かに抵抗しているようで。
今にも身体が木っ端微塵に弾け飛んでしまいそうで。
もう――見ていられなかった。
夢だと判っているのに。
いや、判っているのならば。
私はポケットから小瓶を取り出した。
夢ならば。
「もう…我慢しなくてもいいでしょう、玲様。
夢でも耐えることはない…。
少し…楽になりましょう」
たった1つしかない小瓶。
私のこれからなど、どうでもいい。
玲様がこれを飲むことを望まれるのであれば。
少しでも今の…この地獄から解放できるのであれば。
ああ、だけど。
夢の中いえども、私にはまだ迷いがあって。
「玲様、お飲みになられますか?」
私はずるい。
私は卑怯だ。
全ての責任を、玲様に擦りつけようというのか。
私は最後の決断を、玲様に委ねた。
夢だから。
だからこそ。
「……助けて…。
死にたくない……」
玲様のその一言で。
私は覚悟を決めた。

