桜Side
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長い夢を見ていたような気がする。


夢なのに夢だと判っている…明晰夢。


そこには櫂様と玲様が居て。


櫂様は太い鎖と枷で繋がれた四肢を、思い切り動かして、仰け反るようにして私達の名前を叫び…そして、項垂れるように頭を前に垂らすと動かなくなった。


乱れた漆黒の髪が零れ落ちる刹那、櫂様の目から光ったのは…涙だったのだろうか。


櫂様の元に駆け付けようとした私は、今度は玲様の声を聞いて動きを止めた。


ベッドに繋がれていた玲様。


胸を掻き毟るような動作は…


――発作!!?


夢だと思えども、夢とは思えぬ…何という残酷な悪夢。


気づけば。


私は、玲様の身体を両手に抱いていて。



「……助け…て…」


その唇から漏れる、玲様の壊れそうな心の声を聞いた。


蒼白な頬に、流れ落ちる涙。



「行かないで…芹霞…櫂…」



消えてしまいそうな…懇願の声。



「ああああああ!!!」



そして葛藤のような絶叫。