止まった時間を、動かしたのは君。
僕に魔法をかけたのは君。
――玲くん? あたしは神崎芹霞。
どうして、君じゃないといけないのだろう。
女の数なんて、星の数程いるのに。
よりによって、櫂の想い人。
僕は長年、櫂の切なる想いを知っていたはずなのに。
いつしか櫂の想いは、僕の想いにすり替っていった。
櫂が愛しそうに芹霞を見れば、僕の心は甘く疼いて。
櫂が落ち込んでいれば、僕まで塞いだ気分になった。
それは、従兄弟の血の成せる技だと、当初僕は自嘲していたけれど。
やがて、"嫉妬"という心が芽生えた時、僕は自覚した。
僕は芹霞が好きなんだ。
芹霞だから、僕は好きなんだ。
秘めたる想いは…
熱を孕んで膨らみすぎて…
――止まらなかった。
ねえ芹霞。
君が櫂に揺らがないのなら。
櫂の想いにも煌の想いにも、
応える気がないのなら。
いや、何も応えようとせずに。
僕を好きになってよ。
偽りじゃなく、お試しじゃなく。
本当の恋人になってよ。
僕だけを愛してよ。
僕だけを見つめてよ。
僕だけに微笑んで?
僕だけと思い出を作って?
僕は…君だけを愛し続けるから。
愛し抜くと誓うから。
僕には身分も強さもない…病持ちだけれど。
君を幸せにして上げるから。
だから僕も…幸せにして?
ただ…君が愛してくれるだけで、僕は満ち足りるんだ。

