櫂Side
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「――くっ!!!」




目覚めた俺は、両手両足に鎖つきの枷が括り付けられた状態で立たせられているのを知った。


筋力だけでは、幾重にも折り重なった太い鎖はびくともしない。


此処は――何処だ?


窓すらない、ただの…箱のような部屋。


この四方の壁。


ああ…記憶にある。


漆黒色に、走る無数の真紅色。


"約束の地(カナン)"で何度も見た、この素材。


何故――?


流れる人工知能は…あの地で滅んだはずではなかったのか?


そして厄介なのは、この特性。



「――やはり、駄目か」



俺の力…風でも闇でも…壁に吸収されてしまう。


鎖も切れないから…壁と同じような素材が繰り込まれているのか。



俺の力を、紫堂の力を…弾く、特殊加工。


それの存在があることが、今此処で必然というのなら。



今、俺がこうしてこの部屋に居るのは、

"計画通り"、ということか。



壁に…皹すら入らない。



傷つくのは…枷を外そうともがく…俺の肉体のみ。