桜Side
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櫂様の力が及ばない、紫堂の勢力下にある東京。


苦悶に喘ぐ玲様を見ていながら、誰もが人間として持ち合わせているはずの…慈悲の手を差し伸べない。


特に病院施設。


紫堂系列でも、そうでなくても、大手総合病院も、個人病院も。


明らかに"救急対象"の玲様を見て、"人手が足りない"という理由で、困惑な表情を浮かべてはっきりと拒絶した。


櫂様が直接話しても、院長ですら…まるで事前に判っていたかのように、面会しようとしない。


不在という名前の、居留守に違いなく。


強硬に乗り込もうとすれば、警察に通報され…そんなものを相手する時間が惜しくて、逃げるようにそこから出ては、次の候補病院を探した。電話した。


しかし――

結果はどれも同じ。


何の為の病院だ、何の為の紫堂だ。


玲様がこんな状態なのに!!!


ここまで薄情な街だったのか、東京は。


ただ――


「ボクが1人先に言うと、師匠を助けようと皆協力姿勢見せるけれど…続けて紫堂や葉山の顔を見れば、"逃げる"よね」


遠坂由香の言う通り、私達は…取り分け櫂様に対して戒厳令でも出されているのか、確かに櫂様を見てからの反応がかなり悪い。


「病院だけじゃないけれど、必ず紫堂の顔みたら、何かこそこそ手元の"紙"を見て、態度変える人多いよね」


確かに――そうだった。


「指名手配書でも出回っているのか? 

紫堂の…俺への挑発か?」



櫂様に――

刃向かおうとする不届き者がいるのか。


確かに此処の処、外部で紫堂潰しの動きが見られると…櫂様と玲様は懸念されていたけれど。


昨日までは普通だった。


それなのに今日になったら。


紫堂の次期当主を…『気高き獅子』を窮地に陥れるなど。


何よりその威光を畏怖していた者達を、全て抑えつけ拒絶させられるだけの力の持ち主がいるなど!!!


――ありえない。


だけど。


現実としてありえている。


何ということ!!!