「煌、駄目。桜ちゃん出ない。

呼出音はかかっているけど…」


俺は舌打ちをした。


何だ、あっちは何が起きてる!!?


「…煌、どうしよう…」


泣き出しそうな芹霞を片腕で抱き留め、俺は考える。


「櫂は木場公園に居るって言ってたな、行くぞ」


「だけど…今から行っても…」


「行ってみねえと、判らねえだろうが!!! 今此処でぐだぐだ考えているよりマシだ!!! まず行ってから考える!!!」


俺は櫂みたいに、考えてからの行動は出来ねえ。


脳からの指令を受けて身体が動く時には、いつも取り返しのつかないことになっているから。


そんな愚鈍な俺は、本能の示すものに我武者羅に頼る他なくて。


熟考より直感を。


それが櫂へと続く、最短の道程になると思うから。


「わ、判った。き、木場に行く電車は、ええと…何線だっけ?」


「俺に聞くな!! つーか、電車よりもっと速く行ける方法…」


芹霞抱えて、桜のように屋根伝いで移動するか。

それとも運転手脅して、タクシーで行くか。


刺客が現れれば、それだけ時間ロスだ。


どうする?

どうやれば早く駆け付けられる?


寒空の中での思考は、予想外に俺の頭を冴えさせたらしい。


ここは『TIARA』脇の道。


斜め向いにあるのはコンビニで。


そして俺の目は、1点に釘付けになった。


コンビニの横に停車している…大型バイク。


でかさといい、バッタの進化版みたいなヤケに尖った…急傾斜の形といい、大幅改造していることは間違いない。


嫌味ったらしい、橙色と黒のマーブル模様。


そして大きく筆文字で、"四神会 玄武参上"と書かれていて。


「四神会…玄武…なんか聞いたことあるような。

…まあいいや。借りるぞ」