「待てや……」



しかし。



極悪櫂は、すぐ隣に居て。


極悪オーラを放って、あたし達を射竦める。


ダークな、魔王的な威圧感。


思わず滲み出る嫌な汗。



「お前達…何処かで見たような顔だな。

名を名乗れ」



計都も警戒対象に入ってしまったらしい。


計都は諦めたように溜息をついて言った。



「……彼女は如月さん、俺は…


――黄幡計都」



途端、極悪櫂の目がすっと細められた。



「黄幡…計都?」



何度も反芻して、計都をじろじろみて。



「はははは。だったら仕方が無いな。


見逃してやるしかねえじゃないか」



あたしの"如月"姓なんてどうでもいいらしい。


だけどあたしは、どうでもよくはしたくない。



「人に名前を聞いたのなら、お前も名乗れ!!!」



依然計都に襟首つかまれたまま、宙ぶらりんの状態で人差し指を突きつけた。



「ほほう、俺にそんな口をまだ利くか。

死にたいか、娘」


「何処の何様よ、あんた!!!」


「はははははは」



極悪櫂は突然笑い出して。



「勝手に櫂の…"次期当主"を乱用するんじゃないわよ!!!」


すると。


「乱用?」


向けられた目は、ぞっとする程冷たいもので。



「俺は…正当なる者だ」



下卑た薄い笑いを顔に浮かべ、細めた目に宿るは"狂気"。



「馬鹿言わ「失礼しました~、ごきげんよう~」



計都が突然あたしを連れて走り出した。