そんな時、あたしが不得意タイプのチャラチャラ緑頭が席替えを提案して。


幹事らしい彼の意向に、皆が賛成した。


ああ、こういう…いかにもっていうの苦手だ。


しかもあたしの隣は緑頭で、何この馴れ馴れしさ。


あまりのボディタッチの多さに、ぞっとしたあたしは手洗いにたった。


やはり合コンは怖い所だ。


――会員制の彼女のブログが、今も更新され続けているってこと。


玲くんの手土産も出来たことだし…


――芹霞、よく調べたね。


これがきっかけで元通りになれるかもしれないし。


帰ろう。


洗面台に映る…化粧して縦巻き髪のあたしの姿は、あまりに背伸びしすぎたようで滑稽に思える。


笑えてきた。


あたしが一緒に居るのは、あたしが背伸びしないでいられる男性がいい。


こういう場は、あたしがいるべき場所ではない。


折角弥生が施してくれたものだけど。


やっぱりどう考えても、どう譲歩しても。


あたしは、合コンなんかは好きになれないし。


手を濡らして、髪をストレートに戻す。


いつも通りの神崎芹霞、このままで帰ろう。



そして手洗いから出ようとした時、突然腕を引かれた。


「芹霞ちゃん、此の後2人で抜け出さない?」


それはちゃらちゃらした緑頭。


待ち構えていたように、壁に背を凭れさせて立っている。



「あ、あたし、もう帰りますから。他の方とごゆっくり」


愛想笑いを送って、くるりと背を向け出口を目指す。


弥生には後で電話で謝ろう。


友達としての義理は果たした。



「俺も帰ろうとしてたんだ。うわ、気が合うね? あ、化粧落としたの? すっぴんの方が可愛い。ストレートだったんだ。俺、こっちの方が好み」


なんでこの男、やたらべたべた触ってくるんだろう。


「ねえ…携番交換しよ?」


緑頭は、携帯かざして見せた。


「あたし携帯はもってないんで…」


「ポケットから落ちそうになってる」


「え? 嘘」


「…なんてね、カマかけたけど、ポケットに入ってるじゃん、携帯」


…ちっ。