遠坂榊――。

氷皇の腹心で、かなり腕の立つ男であることは確か。


纏う空気は、素人のものじゃねえ。


あの実力主義の冷酷な氷皇が"部下"を赦すくらいだから、その強さは尋常ではないはずだ。


実際榊は――

電光石火の桜を上回る実力で、桜を寝込ます程の重症を負わせた。


桜に敵わねえ俺など、一捻りもんだろう。


結果――

今まで師を持たず、過酷な実戦経験のみで腕を磨き続けてきた桜は、16年目にして初めて緋狭姉に弟子入りし…更なる強さの教授を乞うようになった。


冷酷非情な紫堂の警護団長として、感情を捨ててまで強さを求めてきた孤高の桜。弱者は切り捨てる、ある意味…氷皇にも似た生き方をしていた桜を、他人に頼る心境にさせたのは、榊の強さだったんだと思う。


それだけ、榊は強かったのだと思う。


決して桜は弱くはねえから。



その榊が――

意識不明だった。