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女達に騒がれて、嬉しいかと聞かれると"NO"。


俺が騒がれたいのは芹霞だけで、芹霞以外の女にちやほやされても意味がない。


喧(やかま)しいだけだ。


俺は12年。芹霞が全てで、芹霞だけにこの身を捧げてきて。


だから、他の女なんてどうでもいい。


鉄面皮だの仏頂面だの、女嫌いだの男好きなど…幾ら言われようが、肉食獣の目をする女達に愛想する必要がない。


仕事の場合は仕方が無い。愛想でそれを受ける代償に、後でたっぷり利用させて貰うだけ。芹霞には見られたくない姿だ。


仕事に無関係ならば、完全無視だ。


更に睨みきかせれば、大抵は大人しくなる。


だけど今回ばかりは程度が酷く、紫堂財閥の名は出さずとも、桜華でも俺の素性はばれていて。


しかし、そんな俺ばかりが原因ではないはずだ。


「だ~ッッ!!!

うるせえ、うるせえッッ!!!」


両耳を手で塞いだ煌の怒鳴り声も、甲高い声でかき消される。


担任が俺達を紹介した時、教室内は奇妙な程しんと静まり返っていた。そのまま1時限目の物理の教師が入ってきて、静かに授業に突入したが私語をする者はおらず、模範生のような授業態度で。


それは恐らく、部屋の後ろに監視するように立っている、白い制服姿の男女が関係していることは、その様子で判った。


煌がきらりと目を光らせて頷く様を見れば、彼らが"自警団"というものか。


その威力はかなりのもので、休み時間すら席から立ち上がる生徒はおらず、ちらちらとこちらに視線は感じるけれども、皆怯えた面持ちのまま身動きすら出来ない様子で。


動くことで、自警団に目をつけられない様に…それを危惧しているように思えた。それだけの厳しさなのか。


俺達すら、その緊張感漂う静寂な空気に双肩を竦めさせることしか出来ず、会話らしい会話をすることも憚(はばか)られて。


2時限目の古文になり、えらく暗い…髪がぼさぼさの男が教師として入ってきた途端、自警団がすっと退室したと思ったら…。


酷い騒ぎが起こった。