「だからといって、こんな荷物抱えたままでは…俺でさえ五分五分。


だとしたら…取るべき術は1つ」



男は懐から、数枚のお札ぐらいの紙を取り出して。





「開け八つの門!! 急急如律令!!!」




あたしは――


夢でも見ているのだろうか。



あたしの家が…


突然、洞窟のようなものに変わるなんて。


神崎家の何百倍もありそうな広い空間は、無数の石碑だけが見える縹渺とした地で。



頬を抓ったけれど、痛いだけ。


現実に間違いないようだ。



「奇門遁甲(きもんとんこう)…八門の陣…」



櫂が何かを呟いたけれど、あたしは理解することが出来ず…代わって玲くんが目を細めた。



此の場に居るのは、あたしと櫂と玲くん、煌と桜ちゃん。


そして紫茉ちゃんと小猿くん。


あの男はいなかった。



「あれ…朱貴は…」

「大丈夫さ、紫茉!!! 朱貴は兄上と同じくらいに強いんだ!!! それよか早くここを抜けよう。時間が経ちすぎると、永遠に放浪する羽目になる」


小猿くんの顔は嬉々としていて。


「開門、休門、生門、傷門、杜門、景門、死門、驚門。此処は迷路になっているけれど、朱貴は目印をつけておいてくれてるから、その通りに進めば大丈夫。おい、お前達もついてこい。俺は優しいから、お前達も助けてやる」


「助けているのは、お前じゃねえじゃないか」


「うるせえ!! 文句あるなら、亡者共の餌となる犬肉にするぞ!!!」


「俺は、人間だっつーーーの!!!」



この2人は、本当に緊張感がなく。


桜ちゃんは大きい溜息をついていた。



おちこぼれ小猿くんだけど。


それでも彼を信じて先頭にして歩くことに対して、誰も反対しなかった。