「お前では無理だ。延々と…蝶を振り払うことしか出来ない。

どいつだ。"魅入られた"奴は…」


口調を変えてあたし達を威圧的に走査する男は、やがてあたしに目を止め、濃灰色の瞳を細めた。



「お前か。


お前が――…


"凶星"か」



それは…決して好意的なものではなく。



「はい?」



思わず聞き返したあたしの言葉を、玲くんが遮って。



「ねえ…無理とはどういうこと?」



男の言葉は、玲くんの矜持を酷く刺激したらしい。



「言葉通りだ。お前では無理だ。


あの相手をするのは」



男が顎で促したのは――



蒼白の仮面。


黄色い外套。



「ひいいいっ!!?

な、何で!!?

いつの間に!!?」



それは距離を詰めるでもなく、ただ沈黙したまま…破壊された穴の付近に立っているだけ。


不気味以外の何物でもなく。


刻みつけられた恐怖が一気に背筋に駆け上る。


あたしを腕に抱く櫂の力が強まった。