煌Side
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小猿の声は、"何か"を引き出す為の詠唱だ。


緋狭姉と"力"の修行をするようになってから、どういうものが紫堂のような想念により発現する純粋な力か、どういうものが久遠のように"言葉"や"道具"から引き出される"力"か、その区別が何となくだけどつくようになってきたと思う。


正直…小猿が乗り込んでくるとは思っていなかった。


乗り込んだとしても、あいつの力は大したことがないからと、そう高を括っていたのは確かなこと。


そして、今。


明朗な声により、次々に増える…小猿の気配。


分散しているような…あまりに妙過ぎる気配。


ありえねえだろ、小猿が1,2…7つに分かれてる!!?


そうとしか思えない、なんだこの状況の異常さ。


櫂だって玲だって、凄い力を持っていても分散…もしくは"分裂"なんて出来ねえだろう。


あくまで主体は1人。


じゃあ何だ、紫堂には駄目でも、"皇城"だとかいう名を戴く奴らは出来るというのか?


紫堂の上だと誇示してるのか?


ふざけるな。


櫂が、たかが猿如きの下に在るはずはねえ。


そんな中、分散した小猿が各々…渋谷で唐突にあの小猿が見せたような、気を高めだして。


さすがに、俺も警戒して、偃月刀を顕現させた。



おいおい…。


あの猿…何おっぱじめようとしてるんだよ。



櫂も桜も戦闘態勢。


姿がなく、"力"の気だけが、分散したまま膨れ上がるその奇妙な事態に。


渋谷で見せたあの時よりも、まだ上昇していく気の昂ぶりに。



俺達の緊張は、否(いや)が応でも高まり――


そして警戒距離は、爆発音で破られた。