「そしてそれは。芹霞の…"サンドリオン"に関する調査にもなる。渋谷での陥没といい…恐らくはもう、俺達は巻き込まれているのかも知れない。"何か良からぬもの"にな」


くつくつ、くつくつ。


櫂様は、不敵に笑われて。


「来るなら来い。黄色い外套男…化けの皮を剥がしてやる。

例えそれが…化け物であろうと」


私達は、頷きあった。



その時――。



「宿りし者の力と念を、わが元においてこの元へと移す」




明朗とした、そんな声が聞こえて。


ぞくりとする程の、何か…膨れあがる力の存在を間近に感じた。



声は…家の外からする。


「このムカつく甲高い声…聞き覚えあるな」


煌が顔を強張らせて、偃月刀に顕現させた。


「ああ、この声は…」


櫂様が漆黒の瞳に強い光を宿らせ、右手に緑の風の力を纏う。



「何、何、何!!?」


1人よく判らないらしい遠坂由香が、挙動不審に辺りをきょろきょろ見渡して。



「これは――小猿の声」


呟いた私は、顕現した裂岩糸を握りしめる。