「玲くん1人で?」
それは意外に思うほど、鋭さを秘めていて。
「……。僕1人で会いに行くのは嫌?」
頭に過ぎった1つの可能性。
縋るように質問すると、芹霞がきっぱり答えた。
「嫌。あたしも一緒に行きたい」
明らかに、拗ねた表情をする芹霞。
僕の心は、溜まらず躍った。
もしかして、妬いてくれてるの?
ねえ、少しは期待していていいの?
櫂と煌の視線が突き刺さる。
痛いくらいの強さがあるのに、それが強いからこそ気持ちよく。
僕は被虐的なのかと錯覚する程に。
「だって…。
あたしの生徒手帳を届けてくれるのに、玲くんだけ行かせるのは、人としてよろしくない」
そういう…ことか。
顔に浮かぶ笑いが、虚しいものへと切り替わる。
極度の期待は禁物だと、長年の"傍観"により判っていたはずなのに。
「ねえ櫂…あたしも行っていいよね? 玲くんも一緒だし」
どうして――
櫂に了承を取るんだろう、芹霞は。
「仮に蝶々来ても、玲くんなら見えるし」
その言葉に、誰もが不愉快そうに表情を曇らせて。
"玲くんなら"
何て気持ちいい響きなんだろうか。
「でね、その後…」
「"シマちゃん"か?」
漆黒の瞳が、芹霞の目に絡みついた。
やっぱり…オチがあったか。
だけど、そんな結果でも…僕と一緒に居ることを選んでくれた気がして、大して悪い気分にはならなかった。
大概…僕も単純な男みたいだ。

