「悪いけどよー」



煌が面倒臭そうに顔を顰めさせて、橙色の頭をがしがし掻いた。



「俺、生きる場所は此処なんだわ。

折角の勧誘だけど、他あたってくれね?」


その目に浮かぶのは、完全なる拒絶。


だから――

私は安心した。


例え馬鹿でも。

例え腐っていても。


手がかかるし、情けないし、毎度怒鳴りつけたくなる…発情してばかりの本当にどうしようもない犬だけど。


だけど。


この男は何が大事なのか、

いつも本能的に見抜くから。


どんな煌でも、煌は煌だ。


私が危惧することなく。



「イヤだと言ったら?」


少年が、やけに大人びたいやらしい笑いを顔に浮かべた。


「仕方ねえよな。元…同士討ちっていうのはしたくねえけど」


細めた…褐色瞳に浮かぶのは。

修羅場を潜ってきた者特有の…剣呑な光。


そして煌は偃月刀を握り直す。



「はははははは」


少年は同時に笑いだして。



「生きる為に寄生するのは僕達も同じ。

"そこ"で生きるというのなら、せいぜい闘いに勝ってみせてよ。

13日間…無事に生きてられるといいねえ。


強いからねえ、めちゃくちゃ。


"あいつ"」



それは…



「ああ!!?」


誰のことを指しているのか。



「僕が来たのはただの"警告"。

またね、BR002。

今度は…昔話しようよ。

前みたく」


そして私達に、子供らしい所作で手を振って。


「また近いうちに会うことになると思うよ?

僕は君の勧誘、諦めていないから。

じゃあ、またね」


にっこりと笑って、空高く跳ね上がると…視界から消えた。