「戻っておいでよ、BR002。僕達は兄弟じゃないか」


それは誘惑のように。


「仲良くやっていたじゃないか、僕達」


褐色の瞳に、僅かな動揺が見て取れる。


何かを思い出しているのだろうか。


しかし煌の記憶は、緋狭様が消しているから、詳細は思い出せないはずなんだ。


しかし私は、その微妙な揺れをどうしても見過ごすことが出来なくて。



だから私は――



「失せろッッ!!!

このクソガキッッ!!!」


もしも煌に迷いが生じていたら。


それだけを不安に思い、ありったけの声で怒鳴った。



緋狭様に、感情を高ぶらせないようにと言われていたけれど。


だけど駄目だ。


――サクラチャーン、マッサージ!!!


私のストレスは、元々限界近かったのだから。


「煌はな――

てめえ如きが懐柔出来る奴じゃねえんだよッッ!!!

この――…

身の程知らずの、過去の残像がッッ!!!」


煌に、過去の暗闇を蘇らせては駄目なのだ。


緋狭さんが、櫂様が。


必死に隠していることを思い出させては。