腹心の部下への報復の為?


違うだろう、それならあの男は1人で何とかするはずだ。


――榊が復帰するまでの俺の手足とする。それが条件だ。


わざわざ元老院の決定を彼の一存で保留にしてまで、私達を動かしたい理由は何なのか。


彼の真意は見えない。


「……?」


乃木坂に入った時、桜華の制服が突如視界を横切り、思わず目を細めて立ち止まった。


普段の私なら、女生徒の集団如き気にもしないけれど、ふと心留めてしまったのは…最近見慣れたその制服故か。


5.6人居る。


皆が手にしてるのは『大学受験予備校黄幡会 入会のしおり』。


高校2年か、3年生か。


そういえば、芹霞さんが"シマちゃん"と呼んでいた少女も、桜華生だった。


目についてしまうのは、学園祭で多く目にしたからか。

それとも…芹霞さんが夢中になっている"女友達"と同じ制服だからか。


結局私も、芹霞さんがハマっているものを見過ごすことが出来ず、自分の仕事の手を休めてまで、どうでもいいようなことに目を奪われるなんて。


ああ――

これではまるで馬鹿蜜柑だ。


自嘲気に笑いながら、手にあるテディベアをぎゅっと抱きしめた時、


「ねえ、女ばかり狙う、あの猟奇事件…どう思う?」


その不穏の言葉に、また私は動きを止めた。


彼女達は私に気を留める様子もなく、目の前を通り過ぎていく。


「ああ、でもあれって…死んだイチル様の呪いなんでしょう?」


"イチル様"


詳しくは聞いていないけれど。


それは――

玲様が調べているものではなかったか。