「櫂、もう少しの辛抱なんだよッッ!!!?
まだ走れば間に合うからッッ!!!」
「芹霞」
不意に。
交わった視線に――
あたしは心を掴まれた。
ブォーーーーーーーッッ
憂いの含んだ切れ長の目。
吸い込まれそうな、その漆黒の瞳。
そこにはいつものような不敵な様はなく。
――芹霞ちゃあああん!!!
「芹霞、俺は……」
口を開きかけて、そしてその唇をきゅっと噛んで――
静かに手首の布に口付けた。
目は…あたしからそらさずに。
真剣に。
ただ一途に。
まるで櫂が抑えた言葉を、その行為から見つけて欲しいと懇願されているかのように。
言えないのか。
言わないだけなのか。
だけどその…辛そうに歪まれた端正の顔は。
どこまでも美しく、誇り高く。
孤高のきらめきを放っていて。
そして、あたしに言ったんだ。
「芹霞、お前は…幸せになれ」
どうして?
「……ごめん」
ねえ…
「あたしの幸せの先には、櫂がいないと駄目なの!!!
判っているでしょ、そんなことくらいッッ!!!」
櫂は更に苦しそうな顔を見せて、そして無理矢理微笑んだ。
「ありがとう。
最期に…救われた」
最期?
ねえ、最期って何!!?

