いやいや、そこまでしなくていいから、櫂!!!
判ってくれただけでいいから!!!
あたしの処に来る暇に、少しでも早くゴールへ!!!
そこを割って入ったのは、久涅。
あたしは背中しか見えないけれど、櫂の顔が思い切り歪んだ。
櫂は基本感情をあまり表に向けない。
嫌悪の表情をするのは、久遠とこの男ぐらいだ。
一触即発の空気を纏う危険な兄弟。
仲悪いの判ったから、そんな男構ってないで、早く走れ!!!
そう怒鳴れば、櫂はようやく動いた。
そして挑発的な…久涅の爆弾宣言に、櫂がひっかかってしまって。
ありえもしないことをよくもしゃあしゃあと!!!
やっぱり久涅は嘘つきじゃないかッッッ!!!
久涅をぶん殴ろうと動いた時、朱貴に止められた。
だから必死に櫂に念を送った。
あたしには不思議な力はないけれど、櫂とであればどんな不思議も可能に出来るように思う。
これは、あたしと櫂だから出来る感応能力(テレパシー)だ。
櫂は、真実を受け取り、久涅に返し…逆上させた。
そして久涅が攻撃をしかけたその僅かな隙に、小猿くんが・・・力を放ったんだ!!!
歓喜するあたしとは対照的に、驚いた朱貴が手を離して叫んだ。
そして――
「折角――
隠し切れていたのにッッッ!!!」
轟くような水柱の重低音の影で、そう叫んでいるのを聞いた。
「くそっ!!!!」
何とも派手な舌打ちで。
小猿くんの師匠である朱貴は、弟子の成長を喜ぶ環境にはなかったということか。
だけど、ごめん朱貴。
小猿くんのおかげで、櫂は動けるんだ。
小猿くんも…煌の帰りを信じている。
皆の想いを乗せて、走れ、櫂ッッッ!!!

