気にするな。
取り合うな。
こんな男に、あたしの櫂の強さは判らない。
無視をした態度が気に障ったのか、久涅はあたしの腕を取って、反対側の手であたしの顔を正面に捻じ曲げた。
「何処まで…俺を拒む」
まるで震えているような声は…どんな感情が込められているのか。
「お前は俺を選んだ。だから…俺は櫂を離した。
それなのにお前は俺を拒む。
全ては嘘偽りなのか!!?」
何を言っているんだろう、この人。
「あたしは――
あんたを選んだつもりはないよ、久涅」
真っ直ぐに、櫂と似た瞳を見つめた。
「嘘だ偽りだとあたしを責めるなら、まずは自分の行動を思い返すことだね」
久涅の眉間に、深い皺が刻まれる。
まるで櫂に怒られている気分。
「俺がいつ嘘をついた、偽りを言った!!?」
随分と…言葉の内容を気にするんだね。
この男、意外と神経質の気があるのかも。
「俺はいつも!!! 本当のことしか言っていない!!!」
どうだかね。
そんな思いを込めて、久涅を睨んでやった。
何だかもう…同情すら出来なくなった。
それは煌の一件が絡んでいる。
どうせあんたが裏で糸を引いていたんでしょう。
煌を苦しませたあんたを、
そして更に櫂を苦しませるあんたを、
「あたしは許さない」
あたしの大事な者達を傷つけて、
それで喜んでいられるような人種を、
「理解したくもない」
櫂は必死なんだ。
櫂を守る玲くんも桜ちゃんも…皆必死で頑張っている。
あたしだけこんな処で傍観者。
ああ…口惜しいよ!!!

