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櫂が――

時間までに横須賀の港に居る、お父さんの所に行き着けばいい。


ただそれだけのはずだった。


その為に、煌も玲くんも桜ちゃんも…由香ちゃんも…必死になってきたんだ。

紫茉ちゃんも小猿くんも、助けてくれていたんだ。


それがどうしてこうなってしまったの?


ねえ、煌。

あんたに8年前のこと、思い出させたくなかったのに。


ずっとずっと、あんたと櫂を守っていくはずだったのに。



――夢…見過ぎていたんだな、俺…。



違うんだよ。

8年間は、ちゃんとした現実。


夢なんかじゃない。


あんたと過ごした8年は、あたし達にとって紛れもない現実。

その上で、あたしは…煌に知らせる必要がないと思ってた。


あたしより遥か前に気付いていた皆だって、そう思っていたからこそ…煌も、そしてあたしだって…何も知らずにいれていたんだよ?


――今までありがとうな、芹霞。


離れないで煌。

行かないで煌。


――男の矜持だ、娘。


そんなもの判らない。

判りたくもない。


戻ってきて。


ねえ――

また笑おうよ。


櫂の元で…皆で笑いあおうよ。

ふざけて馬鹿やって。


あたしに盛ってもいいから。

髪を黒く染めてもいいから。


あたし…逃げないで真剣に、あんたのこと考えるから!!!



――俺…もう、お前を…諦めるしかねえや…。


ねえ!!!


――さんきゅ、な。


今まで通りの生活になるでしょう?


――俺は…制裁者(アリス)に下る。


煌、あたしはあんたが大好きだよ?


戻ってきて!!!