迷いなく躊躇なく…ただひたすら完成された技を持つ紅皇。


彼女だから完遂出来る俺の切り札。

彼女しか出来ない、完璧な決行。


もし緋狭さんが…

俺の知る慈悲深い緋狭さんであるならば。


彼女なら、必ずやってくれる。



舞台は――

既に整っているんだ。



そう、俺はぐだぐだ考えすぎた。

だから彼女は、ずっと俺に告げていたんじゃないか。


死ね、と。


何度も何度も。


そこから俺の切り札は生まれたというのに、それでも俺は揺れ動いていて。



――坊は、死なねばなりませぬ。



これは…俺の未来を賭けた男の矜持。

それで潰れれば、俺はそれまでの男だったということ。


芹霞に相応しくない人物だったということ。


俺は芹霞を見ながら・・・手首の布を口に含んだ。


刹那の静寂。


そこに俺の想いを込めて。

全身全霊の愛を込めて。



「……愛しているよ、芹霞」



その呟きは届いたかどうかは判らない。


だけど覚えておいて欲しい。

いつでもどんな時でも。


俺はお前を愛している。


たとえこの身が滅んでも――

俺の愛だけは永遠に…お前に捧げるから。



俺は――

お前だけの男であり続けたい。