「だが――
それでは坊を守れない。
判っているだろう、玲」
すっと――
目の前に現われた緋狭さん。
そして――
「そこまでの力の放出は、
走り続けたお前に負荷がかかりすぎる。
お前まで――死ぬことはない」
鳩尾に手刀。
途端に意識が――
薄れていく。
崩れ落ちる僕の視界が…暗くなる。
僕の――
力の糧が消えていく。
「逝くのは――
――…坊だけでよい」
僕は…遠ざかろうとする緋狭さんの足を掴んだ。
「櫂を――助けて」
頬に伝い落ちる涙。
「櫂は…必要な…男なんです。
僕のような…"要らない"人間じゃない…」
一瞬だけ…
緋狭さんの表情が崩れた気がした。
「玲。必要なればこそ――
勝負がつく前に…死なねばならぬのだ。
坊も…覚悟していたのだろう?」
ああ、緋狭さん――
「坊の"切り札"を決行させるのは、私だけしかおらぬ」
何処まで判っているのですか。
「煌も制裁者(アリス)に下り、8年前に還った。
お前も、8年前に…還るのだ。
それが…芹霞を守る唯一の手段」
貴方は――。
遠ざかる足音。
僕は薄れる意識の中、思ったんだ。
次期当主に――
ならねばならない、と。
僕が――!!!

