その時声がして。



「櫂様、玲様!!!」


それは皇城翠に支えられるように…いや、皇城翠を引き摺るように連れて走っていた桜で。


「よかった、無事だったか!!!?」


僕の声に、桜はぺこりと頭を下げた。


「翠くんが居るということは…ああ、じゃあ全員で此処に来れたんだね。芹霞も無事か!!?」


「……はい。恐らく、朱貴が連れるかと」


"恐らく"


どうして連れるのが朱貴なのか。

何故桜の顔が曇ってるのか。

無事だという言葉には、僕も櫂も…安心したのだけれど。

妙にひっかる。

桜の言い方が無性に気になった。


「玲様…結界をそんなに張り続けて、お体は!!?」


質問の前に逆に質問されてしまって、僕は苦笑した。


「大丈夫だよ。凄い人海戦術で来てね、時間がかかりすぎるから…結界張ったまま突き進むことにしたんだ。

もう…埠頭で、ゴールは目の前だしね。

だけどもう1つの条件…"エディター"に煌は…」


「大丈夫です。上手くいったと…煌も紫茉さんも言っていました」


僕はほっとして櫂を見た。


「櫂。折角だけど…切り札使わずに行き着けそうだよ。

あとはここから走ればいい、港まで」


時間は15分を切った処。


そう。


ごちゃごちゃ考えるな。

此処には桜も僕も居る。


櫂を走らせればいいだけだ。



「――桜」


櫂は桜に訊いた。


「煌はどうした?」


途端――

桜の顔が引き攣った。