思い出す。


8年前――。

橙色の髪、真紅の瞳。


あたしの視界を真紅色に染めた相手。


――芹霞ちゃあああん!!


櫂の前で、惨劇を繰り広げた相手。


あの姿に――帰らないで、煌。

あんな煌は、煌じゃないから!!!



「行けよ、芹霞」



突き放すように煌が言った。



「行って…俺の代わりに、櫂の力になれ」


「やだ!!! あたしは煌を残さない!!!」


絶対に!!!


「お前にとって一番は、櫂だろ?

お前にとって永遠で運命の…櫂の処にいけ」


胸に突き刺さるような…煌の声。

真紅の翳りに覆われた…褐色の瞳。


触れば壊れてしまいそうな…硝子のような煌に。



「煌!!! あんたも一緒なの!!!

離れないのッッッ!!!」



そんな言葉しか伝えられない自分がもどかしすぎて。


「芹霞…」


少し…煌の声が震えた気がした。


どうすればいい?


「芹霞…俺さ……思い出してきてる。昔のこと」


ねえ、どうすればいつもの煌が戻る?


あたしを見る顔は、何処までも哀しみに覆われていて。


「記憶ってさ…思い出すまでは長いけど、少しでも記憶の片鱗が心にひっかかれば…忘却の壁って…剥がれ落ちてくるもんなんだな…」


そんな――

顔をしないでよ!!!