シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


「じゃあそんな中でワンちゃんがちゃんと帰れたというのなら、ワンちゃんが凄い奴か…それとも意味あって"帰らせられた"ということだね?」


凄い奴なんて思われているわけねえなら。


"帰らせられた"


俺…わざとこのタイミングで、引き戻されたということか?


何で?

誰に?


どちらにしろ、周涅は確信している。

この分じゃ、久涅も朱貴も判っているだろう。


「だから!!!か、帰ってきてなんて…「退け、芹霞」


ぐだぐだしてる時間がねえんだ。


「な、ななななな!!!」


俺は騒ぐ芹霞を押しのけ、上体を起こした。


動揺しているのは芹霞だけではなく…七瀬と小猿も同じようで。


純粋に、芹霞の大根を信じていたらしい。



「お帰り、ワンちゃん…」


実に腹立たしい…赤銅色の氷皇が動じる様子もなく…冷ややかに俺を見ていた。

そして…櫂によく似たチンピラ久涅も。


2組の視線は、かなりの重圧感となり…俺を押し潰そうとする。


俺は、その視線の強さに負けぬよう…顔を凄ませた。


怖いとは思わねえ。


心底怖いと思うのは、緋狭姉と芹霞がキレた時。


そして俺の好きな奴らが窮地に陥った時だけだ。


それ以外なら俺は負けやしねえ。

それくらいの覚悟で生きている。


「ねえ紫茉ちゃん。君は…結構いい処を突いたんだ。"エディター"に許容されている…ふふふ。つまり、そのワンちゃんも…出演者の一部なんだよ」


それは難解すぎる言葉で。


「どういう意味だ?」


七瀬が聞き返す。


「運命の環は巡る…。

全ての出演者は、初めから定められた通りの役目を果たすんだ。

だから、今…此処にワンちゃんがいる」


俺は目を細めた。