「じゃあそんな中でワンちゃんがちゃんと帰れたというのなら、ワンちゃんが凄い奴か…それとも意味あって"帰らせられた"ということだね?」
凄い奴なんて思われているわけねえなら。
"帰らせられた"
俺…わざとこのタイミングで、引き戻されたということか?
何で?
誰に?
どちらにしろ、周涅は確信している。
この分じゃ、久涅も朱貴も判っているだろう。
「だから!!!か、帰ってきてなんて…「退け、芹霞」
ぐだぐだしてる時間がねえんだ。
「な、ななななな!!!」
俺は騒ぐ芹霞を押しのけ、上体を起こした。
動揺しているのは芹霞だけではなく…七瀬と小猿も同じようで。
純粋に、芹霞の大根を信じていたらしい。
「お帰り、ワンちゃん…」
実に腹立たしい…赤銅色の氷皇が動じる様子もなく…冷ややかに俺を見ていた。
そして…櫂によく似たチンピラ久涅も。
2組の視線は、かなりの重圧感となり…俺を押し潰そうとする。
俺は、その視線の強さに負けぬよう…顔を凄ませた。
怖いとは思わねえ。
心底怖いと思うのは、緋狭姉と芹霞がキレた時。
そして俺の好きな奴らが窮地に陥った時だけだ。
それ以外なら俺は負けやしねえ。
それくらいの覚悟で生きている。
「ねえ紫茉ちゃん。君は…結構いい処を突いたんだ。"エディター"に許容されている…ふふふ。つまり、そのワンちゃんも…出演者の一部なんだよ」
それは難解すぎる言葉で。
「どういう意味だ?」
七瀬が聞き返す。
「運命の環は巡る…。
全ての出演者は、初めから定められた通りの役目を果たすんだ。
だから、今…此処にワンちゃんがいる」
俺は目を細めた。

