「きゃああああああああ!?

大群でこっちに来たっっ!!!」


場を切り裂く芹霞さんの声で、私達は現実に還る。


「――ちっ!!!」


一瞬、出遅れた櫂様が舌打ちして、それでも即座に緑の結界を張ったが、元気を取り戻していたはずの芹霞さんの顔が、徐々に青ざめていった。


「櫂、何かおかしい。

…擦抜けてくる。

櫂、あんたの力が効いてない!!!」


――え!!?


「やっぱり!!!

耐久性がついたというの!!?

こんな短い時間の中で!!?

来る、あそこからこっち来るッ!!!」


それは即座の判断だった。


櫂様は――。


「奪われてたまるか、

誰がお前を!!!」


芹霞さんの両目に手を当て、自分の胸に掻き入れると、芹霞さんの身諸共背を丸めた。



「か、櫂? ちょっと何を…」


「何も考えず…守られてろ」



櫂様は――

自分の身を盾に芹霞さんを守るつもりだ。



「櫂に触れさせねえ!!!」


顕現された偃月刀を、芹霞さんが示した位置に旋回させる。


しかし、


「駄目、煌の刀も擦抜けて…ああ、桜ちゃんのも駄目だ!!」


櫂様の手を押しのけ僅かな隙間から覗いていたのか、私達の動きの結果を…芹霞さんは叫んで返した。


何故?


何故私と煌の攻撃は効かない?

何故櫂様の力が効かなくなった?


攻撃してくる相手の姿はおろか、その気配すらも把捉出来ぬ私達は、蝶に翻弄されるだけの…唯の木偶の坊で。


――耐久性がついたというの!!?


"力"を無効化した蝶は、力に対しての"免疫"でも持ったというのか。