櫂Side
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泣きながら芹霞は笑い…芹霞は背を向けた。


そして俺は離れていく。


此の世で最愛過ぎる女を犠牲にして、

我が身を守る為に。


嫌だった。

どうしても離したくなかった。


芹霞に諭され怒られ、現実を突きつけられて。


それでも俺は、芹霞を手放すくらいなら…久涅の元に置くくらいなら、勝負に負けてもいいと思ったんだ。


比較にならぬ程、芹霞が愛しくて仕方が無いから。


だけど…玲も煌も桜を思えば。


皆俺の為に身体を張って。


更に桜と煌の負傷は大きくて。


そんなあいつらの前で、勝負を放棄するわけにもいかず、では3時間で勝負に勝てる奇策があるかというば…俺には"切り札"しかなく。


俺の弱さが、切り札に対して…まだ躊躇させるんだ。


最後の最後まで、俺は藻掻くことが必要なんだとは、理解している。


その為には、俺は此の場から脱出しなければならない。


横須賀に、何よりもまず行かねばならない。


頭で判ってはいても、心が納得しなくて。


――芹霞ちゃあああん!!!


命の危険は無論…、俺は…芹霞に、他の男が触るのが嫌だった。


芹霞は、いつも俺の為に我が身を犠牲にするから、もしも最悪…身体の呈示と俺の命を保証を駆け引きに使われたら、きっと迷い無く…芹霞は身体を捧げるから。


芹霞の為の紫堂が、芹霞を滅ぼすなんて許さない。