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もう――見ていられなかった。


櫂と玲くんの優秀な頭脳をもって、何とか迷わず出口らしき場所に辿り着いたと思いきや…


煌が虫の息で倒れていて。

桜ちゃんが酷い怪我で。


元々…櫂が、行き着く先は皇城関係だろうと予想していたから、皇城家に行き着いたんだろうけれど…御曹司まで倒れていた。


そんな中でぴんぴんしているのは、あたし達と煌達を引き剥がした張本人。

更には極悪櫂までいて。


紫茉ちゃんのお兄さんだから、話せば協力して貰えるかも…なんて密かに胸に抱いていた一縷の希望は木っ端微塵に打ち砕かれた。


――ああ、遊んだのはそこの周涅だ。


怒りすらも…出てこないほど、本当にあたしは絶望感に無気力になって。


今にも死んでしまいそうな煌と桜ちゃん。


そして3時間もないのに、こんな処で闘いを強いられる櫂と玲くん。


あたしはただ、煌が早く目覚めるように抱いているしか無くて。


ああ――

何てあたしは無力なの!!?


一緒に闘うことも出来ず、治療もしてあげられず。


出来るのはただの重荷になることだけ。


由香ちゃんだって、玲くんの手足で動けるのにあたしは何も出来なくて。


そんな時、あたしは久涅の視線に気づいた。


玲くんと闘いながら、あたしに投げられる意味ありげな視線。


あたしは――

意味が判ったんだ。


どうしてここに久涅がいるのか。


どうして、黄幡会での塔のように…櫂達を一斉に拉致するなりして攻め落とさず、少しずつ力を削いでいこうとしているのか。


周涅と協力態勢にあったのなら、2人だけの力でも、あたし達を囲い込んで陥落させることはやりやすくなるはずなのに。


それをしないで"嬲って遊んでいる"というならば、もっと別なことを企んでいるということ。


それは恐らく――

あたしに決断を迫っている。


あたしはそう思った。