――――……昔からそうだった。

「よろしくな」
「よろしくねー!」

何故かみんなは側に居てくれた。
自分から踏み出せない時は、いつも誰かが手を引いて導いてくれたんだ。

その真ん中にはいつも彼女がいた。
今度もそうだろうか?
彼女は手を差し伸べてくれりだろうか?

答は、否。
だって、彼女はもういないから。

僕の目の前で………――――――


「…ゃ、星夜!」

「ん?なに?」

「どうした?ボーッとして」

「ううん、何でもないよ」

僕がこの町に引っ越して来てから、もう一週間が経った。
5月という微妙な時期の転入に、どんな反応をされるか不安だったけどこっちのみんなも優しくて、僕を受け入れてくれた。

でも、一つだけ違う。

「昔のこと、思い出してただけ」

彼女がいない。どこにも、いない。

「ふーん、前の学校?」

「ここに、来た時のこと…」

「最近じゃんか!」

放課後の教室で日誌を書いている友達の翔と、それを眺める僕と委員長。
委員長は難しそうな本を読んでるけど、帰らずにちゃんと待っててくれる優しい人だ。……怒るとちょー怖いけど。

一週間前だなんて、信じられない。
すっかり見慣れてしまった。

違う教室、違う風景、違う香り。
何もかもが新しくて、
わくわくして、そして不安だった。

春と夏の間、オレンジ色の夕陽が教室を染め上げる。あの日を思い出しそうだ。

「よっしゃ、終わり!帰ろうぜ」

「……うん」

「お前を待ってたんだからな、翔」

呆れたような口調の委員長、
実は全然怒ってないということも、
もうわかるようになったんだ。