切なき恋



「両親ともいねぇーんだよ」



・・・えっ?



それって、どういうこと?



「交通事故。学校から帰っていつもの様に、親が帰って来るのを待ってた。

その日に限って二人で出かけてたんだよ。その帰りに事故に合った」



なんで、私に話してくれるの?



「その次の日、起きたら一部記憶が無かった」



一部、記憶が無い・・・?



堅吾はどこか遠くを見ていた。



「医者が言うには、事故のことがショックで記憶が無くなったんだとよ」



じゃあ、もし本当にあの時の堅吾だったとしたら、おじさんとおばさんは死んだって言うの?



そんなはずない・・・・・・・・。



だって、堅吾と一緒に何処かに行ったんだよ?



堅吾であって欲しいと思う反面、違っていて欲しいと思った。



「その一部が大切なことの様な気がしてさ・・・。たまに夢を見るんだ。小さい頃、俺が幼稚園ぐらいの時、女の子と結婚を約束した夢を」



堅吾だ・・・・・・・・。



根拠なんて無い。



もしかしたら、偶然小さい頃結婚の約束をした人かも知れない。



幼稚園の頃に結婚の約束なんてよくある話だ。



でも、何故かこの人は堅吾だと思ってしまった。



「でもその子の顔も名前も思い出せない。だから忘れてることはこのことなのかも知れないって思って・・・」



思い出して?



その子は私だよ?



思い出してほしいのに言葉が、声が出ない。



「ねえ・・・」



やっと出たと思ったら、違う言葉だった。



「ん?」


「どうして、私に話してくれたの?」



そんな大事なことどうして私に話したのかが分からない。



「何でだろうな。つい話しちまった」



ついって・・・・・・・