「きゃーっ、雪女と話しちゃった!!」


 「やだー、怖いっ!!」



 女生徒達から隠れて会話を聞く少女。



 『………』



 滝沢千砂(たきざわちさ)。

 あだ名は〝雪女〟。

 人見知りの為、人と接するときに冷たくしてしまう。

 そういう理由で、周りは彼女の事を〝雪女〟と呼ぶようになった。



 「あの…滝沢さん」


 『………』


 
 名前を呼ばれ、無言で振り向く。



 「…これ、プリント…」



 女生徒は震えながらプリントを差し出す。



 『………』



 あたしがプリントを受け取ると、女生徒は逃げるように廊下を走って行った。



 遠くで「雪女にプリント手渡ししちゃった!!」、「えっ、大丈夫だった!?」という会話が聞こえてくる。