そう思ったけど、痛みはやってこなかった。


ゆっくり目をあければ、そこには…………。



先輩の顔が間近にあった。



なんと、あたしは先輩の胸の中にいたんだ。


「せ、せせせせせせせせせっせ~!!」


あまりにもびっくりしてしまって言葉は出ない。



「ははっ。

そんなにドモらなくたって……ははっ。

手鞠ちゃん、顔、真っ赤だ」


先輩はあたしを抱きしめたまま笑っている。



…………うう。

やっぱし恥ずかしい。



先輩から目を逸(そ)らせば、周りには同じ学校の人たちが先輩とあたしを見ていた。



さっきとは違う種類の注目でわ、ありませんか!!


「あ、あの、あの、先輩!!

放してください!!」


みんなに見られてる!!


あたしは大慌てで先輩の胸を押す。


「う~ん。

それは嫌だね。

さっきコケた時だよね?

足首捻ったでしょ?

足、痛いのに歩かせるとか、ぼくにはできないな~」



いや、あの、『できないな~』じゃなくて!!

だって、みんな見てるし!!

恥ずかしいんだもん!!