「来てっ」
いやいやいやいや!
カバンは…っ!?
てか、いきなりぃ!?
てかてか、あたしの話はぁ!?
パクパクと口を動かすだけで、結局どれも言葉に出てこない。
…えっと。
と、とりあえず…
どこに行くんでしょうか…?
「ほら、早く靴に履き替えてっ」
「は、はいっ」
思わず、鈴の迫力に圧倒されてしまうあたし。
「早く…っ」
靴をはいた途端、またグイッと腕を捕まれた。
外は、雨。
当たっても痛くないくらいの、ゆったりとした雨が灰色の空から流れている。
…って、あれ?
まさか傘無しなんですか?
傘置き場を当たり前の様にスルーして、雨の中を鈴は走る。
…ま、まじですか…っ!

