「その町にはとにかく廃墟が多くって。病院やら学校やら、ガソリンスタンドにボーリング場まで。バブルが弾けた後、建物を壊すお金もなくて、そのまま放置よ」

「それは…マズイわね」

人が多くいた場所ほど、いなくなる時は始末をつけなければならない。

そうじゃないと、いろいろと良くないものが集まってしまうのだ。

「でも可哀想にさぁ。アイドルの女の子、霊感バリバリにあるコだったのよね」

クッキーをバリバリ食べながら、話を続ける姿は、あまり緊張感がないように見えるな。

「昼間っからそういう廃墟を巡らされて、イヤなモン、いっぱい見ちゃったみたい」

「でもそういう現場には、霊能力者の一人か二人は付くんじゃない?」

実際、わたしにも時々オファーが来る。

けれど夏場はイロイロと忙しいので、断っていた。

「うん。いたことはいたけど……」

彼女の表情は、失笑。

…つまり本物ではなかったのだろう。

そういうのも、また珍しくはない。

「それをまた女の子も気付いたみたいでね。ガタガタ震えていたな」