けれどそのせいで、旅館の経営が傾き始めたことに、悩んでいたのだろうか?

「ん~、それも、ある」

「まだあるの?」

普通に聞いていれば、旅館は心霊現象が起こらなくなって困ってはいるだろう。

でもだからと言って、わたし達ができることはない。

「む~ぅん~」

サアヤは腕を組み、難しい顔をする。

「…女将、のことなんだけど」

「女将がどうかしたの?」

「あの人は普通の人。何の力もないわ」

「ええ」

「だからこそ、これからが怖いのよ」

「えっ?」

サアヤはため息を吐くと、ハーブティーを一気に飲み干した。

「すでに旅館のウリは消え去ってしまった。けれどまた何か起これば、それをウリにできるってことを、ボヤの一件で思いついたんじゃないかって思って」

「あっ…!」

彼女の言わんとしていることが、理解できた。

わたしは固唾を飲み込み、真っ直ぐにサアヤを見つめる。

「つまり…女将が旅館で何か騒ぎを起こし、それをウリにする可能性があるってこと?」

サアヤは黙って頷く。