アレは実際に見ないことには、その存在すら知らないはずだし。

「でもすっきりしたことに、女の子と私以外、誰も気付いていなかったのには笑えたなぁ」

「その結果は良いことじゃないから、逆にあなたと女の子にとっては良かったんじゃない?」

「…まぁね」

そこでサアヤはようやく『相談』をしてきた。

「実は後から友達に言われたんだけど」

サアヤの背負っているモノが、旅館のモノを全て食べてしまった。

そのせいで、旅館はウリが無くなってしまった。

なので今は何も起こらない、普通の旅館になってしまったのだ。

そのことが既にウワサとなり、広まっているらしい。

「まあ私はせいぜい、あの部屋にいるモノが無くなれば良いと思っていたんだけど。予想以上に被害が大きかったらしくてさ」

「そこはあなたが言い聞かせなきゃ、ダメだったんじゃないの?」

「だって寝惚けてたんだもん。無自覚だったんだもーん」

拗ねたように唇を尖らせるけど、流石にちょっとは悪いと思っているらしい。

眼に迷いの色が浮かんでいる。