あたしは、杏の言った条件を聞いて落胆した。
もっと簡単な条件だと思ってたから。
言う直前の杏の表情から、嫌な予感はしてたけど。
まさか・・・。
「碧いボール」だなんて、絶対無理だ。
あたしたちは弱いから。
中体連で優勝はできないから。
じゃあ、どうする?あきらめる?
・・・だめ。
そんなの、あたしの性に合わない。
優勝すればいいんだ。
「碧いボール」を手に入れる条件のひとつに「努力して手に入れた勝利」がある。
あたしたちみたいな弱いチームが勝利を手に入れることを言うんだ。
だから、頑張れば可能性はあるんだ。
そうか・・・。
でも、それには杏の力は必要不可欠だ。
果たして、退部を考えてる杏たちが協力してくれるか・・・。
杏から条件を突きつけられてるんだから、あたしからも少しくらいお願いしてもいいよね?
あたしは杏たちにむかって言った。
「やってみせるよ。必ず杏たちの退部を阻止する。でも・・・」
杏たちは表情を変えない。
「でも、あたしからも条件がある」
あたしがそう言うと、杏たちが驚いたような表情になった。
そりゃそうだよね。条件の条件だもんね。
しかもそもそもをあたしが言い出したんだもんね。
おかしいよね・・・。
「聞いたこと無いよ。条件に条件をつけるって、どういうこと?」
・・・そのままだよ?
やっぱりそうきたか。言うと思ったけどさ。
「あたしからの条件はね、中体連で優勝するために、杏たちも全力で、本気で頑張ってほしいの。杏たちの力がなかったら、挑戦する前から結果なんてわかったようなもんでしょ・・・?」
杏はなんて言うかな?
「やだよ。あたしたちは退部したいって思ってるんだよ?そんな人が全力なんて出すわけないじゃん」
だろうね。
口では全力でやる、なんて言っても、退部したい人がそんなこと言ってたら、信じられないもんね。
でも、杏は違うから。あたし、知ってるから。
杏は、自分で言ったことにうそはつかないって、知ってるから・・・。
杏がしばらく考えて、あたしを直視してうなずいた。
「しょうがないからね。あたしはちゃんとやるよ。知ってるでしょ?だからさ、麻紀たちうもちゃんとやってげてね」
麻紀っていうのは、うちの8番で、スリーポイントの名手。
麻紀がいなくなるのも困るな・・・。
杏の後ろにいるひとたちもうなずいた。
良かった。
あたしはキャプテンだから、みんなを信じてあげないとだめだよね。
だから今は、杏も麻紀も、誰も疑わない。
みんな、協力してね・・・。
絶対優勝させてみせるからね!!