その声には、笑いが混じっていた。
俺の背中を、何か冷たいものが駆け抜ける。
「……いい。遠慮する」
「そんなわけにはいかないの!晴人、里美先輩を落とすのよ!」
「そんな事言っても……」
「だって健先輩、里美先輩を妹みたいに可愛がってるんだ。気にしてるんだよ。
里美先輩に彼氏ができたら、私の方だけ見てくれるかも」
……そういう事か……。
「自分のためじゃねぇか……」
「当たり前よ」
「確かに、仲が良さそうだもんな」
「良さそうっていうか、良いの。
ね、私に任せなさい!お互いの不利益にはならないんだから!」
「……はぁ……」
何が悲しくて、妹に自分の恋の橋渡しを頼まねばならないのか。
くれぐれも、余計な事をしないように念を押して、彩花を部屋から追い出した。
頭が痛い。
嵐の、予感がする――。



