そんな話をしていたら、晴人が二階から降りてきた。
部屋着の晴人は、あたし達を無視して、冷蔵庫を開ける。
「晴人!制服クリーニングしたから持っていきなさいよ!」
「はぁ?いつの間に?」
「言ってもなかなか出して来ないから、お母さん勝手に持ってったのよ。今まで気づかなかったの?」
晴人はテーブルの上に視線をうつすと、サッと顔色を変えた。
そして冷蔵庫から出したジュースのペットボトルを乱暴に置いて、大股で近づいてきた。
「マジかよ……」
テーブルに近づいた晴人は、眉間にシワを寄せて、ビニールをかぶったブレザーを手にとり、うなった。
「おいババア、ポケットに何か入ってなかったか?」
「ババアとは何よ!何かって、何よ」
「それはほら……アレだ……その……」
低い声でボソボソと言うのを聞いて、ひらめいた。
「もしかして……これ?」
さっきお母さんに渡された、小さなビニールに入ったヘアピンを差し出すと。
晴人は真っ青な顔をたちまち真っ赤にして、それをひったくった。
そして何も言わず、二階へ上がっていってしまう。
頭にハテナマークを浮かべたお母さんを残し、あたしは晴人の後を追った。
部屋のドアが閉められる瞬間、鞄を挟みこむと、晴人が怒鳴った。



