「ありがとう」


……頭に、花が咲くようだった。


短く切られた髪。

ひょろりとしてるけど、高い背。

ブレザーをきちっと着ている。

小綺麗な顔に、メタルフレームのメガネ。


その奥にある、優しい、見守るような瞳……。


彼は、『知的』という言葉がぴったりだった。


「いえ……」

「本当にありがとう。じゃあ」


にこにこと日だまりのような笑顔で、私の目をしっかり見つめて、お礼を言って。


彼は、プリントの山と共に、廊下の向こうへ消えていった。


「彩花?顔が赤いよ?」

「ヒナ!あの人、カッコイイね!」


頬が熱い。身体中が熱い。


「ってあれ、次期会長じゃない?」


「じきかいちょ?」

「次期生徒会長。2年の先輩。
去年から生徒会にいて、今年も選挙に出るんだよ。
まぁ選挙といっても出る人いないから、ほとんどあの人で決まりみたいよ」


あたしはヒナの説明をぼんやり聞きながら、彼の姿を思い出していた。


晴人とは全く正反対な、爽やかな見た目。


優しい笑顔を思い出すと、胸がきゅんとした。


「名前はっ?」

「何だっけ……」

「なによう。あぁ、お近づきになりたいなぁ……」

「そんなの、簡単じゃない」


ヒナが、にやりと笑う。


「生徒会に立候補すればいいんだよ」


彼女は、自信満々で言った。