家に帰ると、お母さんが出迎えてくれた。
「ただいまー」
「彩花、ちょっと」
呼ばれてリビングに行くと、テーブルの上に、クリーニングしたてのブレザーが置いてあった。
あたしと晴人の二人分。衣替えしたから、冬服を出しておいてくれたんだね。
「彩花、これ彩花の?」
「ん?」
お母さんが差し出した手の平には、汚いヘアピン……らしきものが乗っていた。
折れたものを接着剤でつけたようだ。
「知らないよ」
「あら?変ねぇ。ポケットから出てきたってクリーニング屋さんが言ってたんだけど」
なんで???
「クリーニング屋さん、間違えてるんじゃないの?」
「そうかしら……でも彩花が知らないなら、そうかもね」



