するとゴール目前で、メガネが現れた。
が、俺は既に、床を蹴っていて――。
ガシャァァン!!
ボールを叩きつけ、そのままゴールポストにぶら下がった。
「試合終了!!」
わああぁぁぁ、と大きな歓声が、体育館中に響く。
勝った――。
床に着地した瞬間気が緩んで、そのままヤンキー座りしてしまった。
「晴人、やったな!」
和樹の声と共に、拍手の音まで聞こえた。そして。
呼吸を整えていた俺に、細い影が近づき、手を差し出した。
そちらを見上げて、驚く。
なんとメガネが俺に、手を貸そうとしていたんだ。
「大丈夫?」
そう言われて俺はすぐに、自分の力だけで立ち上がった。
「……うっす」
「じゃあ、こっち。早く集合してね」
メガネはにこりと笑い、さっさと行ってしまった。
アイツ……意外と負けず嫌いで、性格悪いんじゃねぇか?
3ポイントを決める直前も、『にやり』と笑ったし……。
まぁいいか。とにかく、勝った!
ふと観衆の方を見ると、試合を見て興奮したのか、頬を赤く染めた新川先輩がいた。
笑顔で、小さな拍手をしている。
その目はメガネじゃなく、俺を見ていた。
そんな顔をされたら、どうしても頬が緩んでしまう。
俺は照れ隠しに、観衆全員に向かって、やったぜ、と拳を突きだした。



