「まだ5月なんだからさぁ、そんなに焦らなくて良いんじゃない?
そのうち、彩花が良いやつだってわかってもらえるよ」


ヒナの言葉が心に染みた。


そうだ。私はわたしだもん。きっとわかってもらえるよね。


ヒナに笑いかけようと横を見た瞬間、廊下の角から突然人影が現れた。


「あっ!」


──バサバサバサ!


肩がぶつかってしまい、その人が持っていたプリントの山が、廊下に散らばってしまった。


「うわぁ、ごめんなさい!」


ぶつかった人は、男子の制服を着ていた。


ひょろりとしたその人は、床にかがみながら言う。


「大丈夫だよ。気にしないで」

「すみません、お手伝いします!」


必死でプリントをかき集めるのを、ヒナも手伝ってくれる。


再び山になったそれを軽々と持ち上げたその人は、にこりと私に笑いかけてくれた。