「よし、やってやるか」
「おう」
和樹に声をかけ立ち上げると、さっき彩花が出ていった出入口から、小さな影……いや、光が現れた。
「……!」
新川先輩だ。
先輩はメガネに気づき、笑顔で近寄っていった。
「健くん!もしかして二回戦?」
「うん。里美は彩ちゃんと交代?」
「そうなの」
……健くんだ?里美だ?彩ちゃんだ?
胸の中に黒いもやがぐるりと一周した。
……絶対、勝つ。
「じゃあ……男子二回戦、はじめます」
新川先輩の声で、両チームが集合した。
先輩はそこで初めて俺に気づいたらしい。
口を「あ」の形にして、こちらを見ていた。
だけど俺は、先輩から視線をそらし、相手チームを上からにらみつけてやる。
いつの間にか良いところを見せたいというより、メガネに勝ちたいという気持ちの方が、俺の中に膨らんでいた。
しかしメガネは涼しげな顔で、俺と目を合わそうとはしない。



