結局、雪は今日まで降らずにもちこたえた。
理事長主催のクリスマスパーティーがあるのは、今日の夕方から。
会場は理事長所有のホールだ。
行った事は無いが、アホのように広いらしい。
「バイクはヤベェな。今日こそ雪降りそうだもんな……」
「そうだね。バスで行こうか」
すっかり俺を足として頼りにしていた彩花は、ガッカリした顔で言った。
この日のために用意したドレスに身を包んだ彩花は、はたから見たら本当に綺麗なんだろう。
メガネの趣味なのか、文化祭の時のウェディングドレスを彷彿とさせる、白いロングドレス。
それに負けないようにした、いつもより派手めの化粧。
背中や胸が開いていて、寒そうだ。
と言ったら、腕を叩かれた。
家を出る直前まで、アップにした髪をいじりながら、鏡の前でくるくる回っている。
そんな妹をいつまでも微笑ましく見ているほど、俺は気が長くなかった。
「もう、いくら見たって変わらねぇよ。いい加減にしろ」
「えっ、もうそんな時間?」
「そんな時間だ。行くぞ」
俺は三井が選んだスーツを着て、親父に借りた靴で家を出る。
彩花は俺を見て、「さすが三井先輩。晴人がカッコよく見えるなんて」と、褒めてるのかけなしてるのか、よくわからない批評をした。
会場に着いた時には、いよいよ空模様が怪しくなってきた。
彩花はすぐに生徒会のメンバーが集まるテーブルに走っていってしまった。
スーツのメガネを見て、とろけた彩花が気持ち悪い。
「チッ……」
生徒会が集まっているという事は、自然に里美もいる。
視線を外して、俺は事前に言われた通り、壁際にもたれた。
浮かれたやつらは、ホワイトクリスマスなんて素敵、なんて言ってるけど……素敵なわけない。外はものすごく、寒い。
それにバスや電車が込むじゃねぇか。
降らなきゃ良いなぁ、と思いながら、ぼんやり会場を見渡した。
どいつもこいつも、浮かれてやがる。
どこか息苦しさを感じて、ネクタイを緩めた。



